再興に向けた4つのビジョン
そのため、彼は4つのビジョンの下で、この地域のコーヒー産業の復興を目指しました。
1) コミュニティと共に:農園・コミュニティに暮らす人々の生活を脅かすことなく尊厳のある生活を目指します。その為に学校や診療所を建設。バランスの取れた食事を提供する栄養プログラムも実施しています。
2) 子供たちの保護:子供たちは学校に通い、農場でもパティオでも決して働く事はできません。
3) 持続可能性:農園の30%は自然保護のエリアとして、水資源や森林保護に準じます。農園の拡張・植林をする為に、木を切る事は良しとしません。
4) 伝統の尊重:我々はコーヒー生産の地域に暮らします。コーヒーは我々の生活の一部であり、生き方・伝統の1つです。コーヒーの生産に関わる全てのプロセスに重きを置きます。
こうしたビジョンの下で、専門家チームを作り、農法や生産品種、高品質なコーヒーの生産に対して情熱を燃やし取り組んできました。特にさび病の経験から、木の選定や農法だけにこだわらず、スターマヤやマルセレーサなど近年開発された品質や病耐性・収量に優れた品種の導入は大きな効果を齎し、1ヘクタール当たり最大30キンタル、一般的なチアパスの2.5倍程度にまで拡大しました。また、マグノリアやインガなどのシェードツリーを適切に利用した農地は、防風から木を守り収量を安定化させただけでなく、土中に窒素を蓄え、殺虫剤や農薬の使用を抑制させています。
また、水資源を守るためにも、投資を惜しまずに2009年にピニャレンセ社のエコパルパーを導入し、大幅な節水とチェリーの選別ラインによる品質向上がなされています。収穫後の生産処理プロセスにおいても、乾燥工程や発酵工程の実験を重ねて、より付加価値の高いコーヒーを生産しようと研さんを重ねています。
エドゥアルド氏は、彼の農園のコーヒーによってこの地域の偉大なコーヒーが再び評価される為に、人生をコーヒーに捧げ、この農園に彼の全てを注いでいます。
サンチュアリオ・プロジェクト
エドゥアルド氏が、積極的に高品質なコーヒーの生産に取り組む中で、専門家チームとして様々なサポートを行ってきたのがコロンビア サンチュアリオ農園のカミーロ氏でした。彼は、2010年から世界中の素晴らしいコーヒーをマーケットに供給したいとメンバーとプロジェクトを始め、2017年に本格的にSantuario Projectを発足。コロンビア、ブラジル、コスタリカ、メキシコの4か国でパートナーたちとユニークで最高のコーヒーを作ろうと動きました。そして、コーヒーの栽培やミルに一層の付加価値を与えるために、特別な品種・独自の生産処理理論を駆使し、品質向上と共に農園の持続可能性を模索しています。
ハイドロファーメンテーション
昨年のコスタリカCOEの上位でこのようなプロセスのコーヒーが出品されました。シナモンのようなフレーバーを有したこのプロセス。嫌気性発酵(アナエロビック・ファーメンテーション)とも呼ばれています。
何がされているかというと、イエローハニーやホワイトハニーなどで除去された別ロットのミューシレージとレッドハニー(ミューシレージがまだ付いたパーチメントコーヒー)を1つのタンクに浸けて密閉。ミューシレージの酵素反応によって発生する炭酸ガスの圧力によって、パーチメントコーヒーの中に通常以上のミューシレージ成分を浸透させることが狙いです。ウエストバレーでこの生産処理を行っているルイス・カンポス氏は、15~18時間の密閉状態を作り、このプロセスを実践しています。また、このプロセスの肝となるのは、良い条件で生産・収穫された完全完熟チェリーが2ロット必要な点です。この双方のチェリーが共に良い状態で揃わないと、不完全なミューシレージ成分を付着させる事となり、求めた味わいは再現できないと言います。